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2013'12.13 (Fri)

『奇跡を呼ぶ天使の贈り物』が電子書籍になりました。

『奇跡を呼ぶ天使の贈り物』が電子書籍になりました。


★内容紹介です。

クリスマス・イブの夜、失恋した主人公の安部美幸は、街で天使(天ちゃん)に出会います。
天ちゃんは、彼女の身におこるという「人生で最大の悲しい出来事」に備えて、3週間ともに生活しながら、大切なメッセージを伝えるためにやってきたのだと言うのです。

食いしん坊の赤ちゃんのような天使を、初めは不審に思っていた主人公も、「天ちゃん手帳」「寝る前の3つの習慣」など、天ちゃんの毎日の教えによって、少しずつ成長していきます。

そして、願っていた素敵な男性も出現します。
しかし、3週間後、「人生で最大の悲しい出来事」がついにやってくるのです…。

ページをめくるたびに、あなたの夢が現実に近づく。少し笑えて、最後に泣ける、魂を揺さぶる感動ストーリー。

奇跡を呼ぶ天使の贈り物奇跡を呼ぶ天使の贈り物
(2013/11/21)
中井 俊已

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★では、出だしの部分をご紹介します。

出会い

その年のクリスマスイブは、最悪かつ最高の日だった。
クリスマスソングが流れる繁華街を歩きながら、昨日届いたケータイのメールの文章をあたしはまた思い出してしまった。

 サヨナラ
イイクリスマスヲ

このたった二行が頭にこびりついて離れない。いや、一直線に飛んできた矢のように胸につきさって抜けない。
この言葉を放った彼のことを、どうしても考えてしまう。今頃、彼はどうしているのか。賑やかなクリスマスソングを聴きながら、別の子と腕を組んで歩いているのかもしれない。点滅するイルミネーションが二人の頬を赤やオレンジ色に染めているのかもしれない。

「サヨナラ」の後の「イイクリスマスヲ」というありふれた祝福の言葉に胸がズキンと痛む。
バカだよな、あたしって……。どうかしてる。もしかしたら、気持ちが変わってくれるかもしれないって、約束した喫茶店にさっきまで二時間も粘っていたんだから……。

その後、あたしは初めての店に入って、飲めもしないビールとお酒を一気に煽った。やけ酒だった。そのせいで、頭がクラクラして、足元がふらついている。
クリスマスのプレゼントとして、二週間前から用意しておいたマフラー。バッグに入れてもってきた。どうしたらいいのだろう。誰かにあげようか。でも、誰にあげればいいの……。

通りを彩るイルミネーションの赤や黄や緑色がきらめいていて眩しい。
ブティック店のショーウインドーの女優のポスターがふと目に入って立ち止まった。大きな瞳、形のいい鼻、愛らしくほほえんだ唇、白くて健康そうな肌、さらりと伸びた黒髪。いま人気抜群の若い女優だ。
いつかその女優が主演するドラマを見ていたときに、横にいた彼が笑いながらささやいた言葉を思い出した。「君はこの女優に似ていて素敵だよ。もう少しダイエットしたらね」

突然こみあげてきた感情を払うかのように頭を何度か振って歩き出した。
その様子を見ていたのか、すれ違った一組のカップルが遠ざかりながらささやいた。
「あの人、酔っぱらってるね」「違うわ、泣いているのよ」

どこをどう歩いたのか、覚えていない。あたしはいつの間にかどこかの教会の前に立っていた。
赤々と灯りがともってはいるが、もう夜の礼拝は終わったのだろう、教会内に人の気配はない。見あげると教会の塔の先端に光に照らされた鐘があった。

そういえば、去年の春、どこかの教会で結婚式をあげた子がいて、参列したのを思い出した。あのときは、あたしも近いうちに、自分のために鳴る教会の鐘の音を聞けるんだろうって思っていたのに……。
もしも神さまとやらがいるのなら、無性に文句を言いたくなってきた。

「ずっと楽しみにしていたんですよ。彼に会えるの。プレゼントするマフラーも持ってきたのに……。でも、どうしてこうなっちゃったの?神さま、何が悪かったっていうんですか。あたし、どうして、こんな辛い目にあわなきゃならないんですか」
いったん愚痴を口に出してしまうと、日頃の不満も思い出されてくる。

「それだけじゃないんです。今日もね、会社で上司からさんざん嫌味を言われちゃった。仕事が遅いの、ミスが多いのって、いつもガミガミ言われて……。もうウンザリです。」
教会はしんとして闇の中に立ち、塔の鐘がぼんやりと光を反射させている。

「あたしって、ダメですね。彼には逃げられるし、仕事はうまくいかないし、何にもいいところないし……。でも、神さまに文句言っても仕方ないですよね。神さまが悪いんじゃないのにね。……ごめんなさい。あたし、これからどうすればいいんですか。あたし、幸せになりたいです。教えてください」

そうして、ひとりで声も出さずに泣いていた。
 
それからどれだけそこに立っていたのだろう。
さっきまで全然気がつかなったのだが、教会の入り口に、小さな子どもの形をした天使の白い像が飾られているのに目が留まった。
大きな目、ちょっと上を向いた小さな鼻、ふっくらした頬、愛らしい唇。
その天使の顔を見たとき、どうしてだろう、なんとなく懐かしい気持ちになった。
前に、ここに来たことがあったのだろうか。
まさか、そんなはずはない。

その天使をじっと眺めているうちに、この寒空に白い衣一枚を着ているのがなんだか可哀想に思えてきた。そこであたしは、もっていたバッグからあのマフラーを取り出した。

「もしよかったらもらってくれる、天ちゃん」
そう言って「天ちゃん」の首にマフラーを巻いてあげた。
「うん、似合うわ。かわいい」
天ちゃんにちょっと笑いかけてみた。あたしの白い息が天ちゃんの顔にかかった。

そのときだ。腰が抜けんばかりに驚いた。
だって、その天使の像が笑ったように見えたからだ。ちゃんとこちらを見て……。
どうしたんだろう、あたし、そんなに酔っぱらっちゃたの?

「だいぶ酔っぱらってるみたいだね」
天使の像がしゃべった。そんなことがあるのだろうか。子どもみたいな舌足らずなしゃべり方。もしかして近くに子どもが隠れていて、からかっているのではないかと思ったが、どこにも見当たらない。しかも、目の前の天使はさっきから嬉しそうにくすくす笑っているではないか。わが目とわが耳は、目の前の天使が自分に語りかけているのをどうしても否定できなかった。

「だ、だれ?あなた……」
「ボク、天ちゃんだよ。君がさっきそう言ったじゃない」
「うそ、うそ、うそー!」
あたしが叫ぶのを聞いて、「天ちゃん」と名乗る物体は、こう言ってほほえんだ。
「あはは、君もかわいいよ」

めまいがした。あたりがグルグルまわってる。
気が遠くなるって、こういうこと?
あたしは自分の意識がどこかに吸い込まれるように消えていくのを感じた。


  アパート 

目が覚めると、ベッドに横たわっていた。
言い遅れたが、あたしの名前は、安部美幸。地方から東京の短大に進学し、会社勤めをして二年目になる。

上京してからずっと住み慣れているわが家は、コーポ暮れないという名がついたアパートの二階にある。コーポ暮れないは、その名が示すとおり夕陽はたっぷり眺めることができるのだが、朝日を拝むことは決してできない。

あたしは暗がりのなかで、学生のときから使っている電気スタンドに灯をつけた。
部屋は、キッチン、トイレとバスがついてはいるものの、六畳一間にベッド、パソコンと本立てをのせた机、椅子、テレビを置くと、美容体操ができるスペースもない。

西日を避けるために去年の暮れに付け替えた薔薇のカーテンレースをぼんやり眺めながら、あたしは昨日の記憶をたぐり寄せていた。

そうそう、昨日は彼に振られて、やけ酒飲んで、酔っ払って……。それから、どこか教会みたいなところに行って……。
いや、あれは夢だったんだ。あたし、酔っ払いながら、アパートに帰って、着替えもせずに、そのままベッドに倒れこんじゃったみたい。少し頭が痛い。二日酔いかな。

よっこらしょと体を起こしたときだった。
「おっはよう!」
 あたしは、そのまま腰を抜かしそうなほど驚いた。だって、そこには昨日見た、いや夢でみた天使がいたからだ。
でも、今度は白い像ではなく、人間の姿に見えた。大きな瞳は黒く輝いていたし、ちょっと上を向いた鼻にはちゃんと穴がある。ふっくらした頬には赤みがかかっていて、愛らしい唇はさくらんぼ色をしていた。それに、ふわふわした茶色の髪にはカールがかかっているし、その下の耳はおもちのようにやわらかそうだ。

首の下には七十センチそこらの体をすっぽり覆うような白地の服を着て、その背には銀色にも白色にも見える羽をはためかせいていた。なんと彼はその羽の忙しい動きで、いま宙をふわりゆらりと浮かんでいるのだ。
「うそ、うそ、うそー!」
「うそじゃないよー」
 天使がしゃべった。さくらんぼ色のすき間から白い歯がこぼれ、黒曜石のような瞳がじっとあたしを見つめている。

夢じゃない、ということは、何?これって、何なの?
「あたし、おかしくなっちゃったの?」
「え?おかしくなった?そうじゃないよ。なったんじゃなくて、前からおかしかったんだよ。だから、ボクが現れたんだ」
「えー?それって、どういうこと?あなた、いったい、何よ、何なのよ」
「ボク?ボクは天ちゃんだよ。ミーちゃんが昨日そう言ってたじゃない」
「ミーちゃんって、あたしのこと?ああー、頭がおかしくなりそう、頭が痛いー」
「頭が痛いのは、ミーちゃんが飲み過ぎだからだよ。それって自業自得だよ」
天ちゃんと名乗る天使はケタケタと笑った。

それから、あたしと天ちゃんの不思議な三週間が始まった。

奇跡を呼ぶ天使の贈り物奇跡を呼ぶ天使の贈り物
(2013/11/21)
中井 俊已

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2008'07.17 (Thu)

童話「ミラクマくんのお見舞い」

教師だった頃、年に1度の学芸会で上演するために
小学2年生と「クマくんのお見舞い」という劇を創りました。

脚本・演出は担任の私、
小学2年生の子どもは動物たちを演じて好評でした。

さて、その劇を、新刊『きっと、だいじょうぶ。』発刊を記念し、
「ミラクマくんのお見舞い」と題して、童話に改作しました!

お時間のある方は、どうぞお楽しみください。


・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


ミラクマくんのお見舞い 
作 中井俊己


静かな森の中で、一ぴきの子グマがうつむいて、地べたにすわりこんでいます。
そこへ小鳥たちがやってきました。
「あっ、ミラクマくんだ。」
「ミラクマくん、どうしたの?」

すると、子グマは急に大きな声を出しました。
「あああん。」
小鳥たちは、おどろいてとび上がり
「わあああ。」
と、わめいて、羽をバタバタさせました。
「ああ、びっくりした。」
「ミラクマくん、泣いているの?」
「ミラクマくん、どうしたのかな?」



そこへ、リスたちがやってきました。
「おおい、小鳥さん。」
「そんなところに集まってどうしたの?」
「何か楽しいことでもあるのかい?」

すると、また、ミラクマが叫び出しました。
「ああああん。」
「わああああ。」
リスや小鳥たちは、おどろいてひっくり返りました。

立ち上がると、リスが口を開きました。
「ああ、びっくりしたあ。」
「ミラクマくん、泣いているのかい?」
「ミラクマくんの泣き声って、ごうかいだなあ。」


 
そこへ、ウサギたちがやってきました。
「おおい、みんな、集まって何しているの?」
 小鳥が答えました。
「ミラクマくんが、泣いているんだよ」
「えっ?ミラクマくんが……」
ウサギたちは、思わず顔を見合わせました。

そして、一ぴきのウサギがおずおずと言いました。
「ミラクマくん、ごめんよ。この前、ぼくたちが
『君の耳は短いなあ』って、悪口を言ったこと、おこっているんでしょう。」

ミラクマは、ずっとうつむいたままで聞いていましたが、
目に両手を当てたまま急に叫びました。
「ちがうよ、ちがうよ。あああああん。」
「わあああああ。」
ウサギもリスも小鳥も、またその大きな声におどろいて、ひっくり返ってしまいました。
 


そこへ、ヘビたちがやってきました。
「おおい、みんな。」
「みんな、集まってどうしたんだ?」
「みんなでダンスをおどっているの?」

困った顔で、ウサギが答えました。
「そうじゃないよ。ミラクマくんがさっきから、泣いているだよ」
「えっ?ミラクマくんが……。」
ヘビたちは、たがいに顔を見合わせました。

そして、なんだか申し訳なさそう言いました。
「ミラクマくん、ごめんね。」
「この前、ぼくたちが『クマよりヘビの方がえらいんだ。
そのしょうこに、ヘビ年はあっても、クマ年なんかないんだぞ』って、
いばったから、泣いているんでしょう。」
「ちがうよ、ちがうよ。わああああああん。」
「わああああああ。」
また、みんな、またまたひっくり返ってしまいました。
 


そこへ、タヌキたちとキツネたちがやってきました。
「おおい、みんな。」
「いったい、どうしたんだ?」
「すもうでもして、遊んでいるのかい?」
ヘビが答えました。
「そうじゃないよ。ミラクマくんが泣いているんだ。」
「えっ!ミラクマくんが……。」

タヌキとキツネは、おどろいて顔を見合わせました。
そして、泣いているミラクマをのぞきこむようにして言いました。
「ミラクマくん、ごめんよ。」
「この前、ぼくたちの化けくらべ遊びに入れてあげなかったから、
泣いているんでしょう?」
「ちがうよ、ちがうよ。あああああああん。」
「わあああああああ。」
 
みんな、ぶっとんでしまいました。
「こまったなあ。」
「ミラクマくんは、どうして泣いているのかなあ。」
キツネも、タヌキも、ヘビも、ウサギも、リスも、小鳥も、どうすることもできません。



「あっ、森の長老さまだ。」
見ると、向こうからぶあついメガネをかけたフクロウがやってきました。
「いやあ、諸君、元気かね。」

すると、キツネが言いました。
「元気ですとも、長老さまもお元気そうで何よりです。」
「おや、おまえはこの前、鬼に化けて、村人をおどかしていたキツネだな。
あんなことをすれば、人間がわしらをこわがるようになる。
もう、あんなバカなことはしてないか。」
「し、していませんよ。
それにもともと、おどかすつもりなんかなかったんです。
みんなで、化けくらべ遊びをしていたら、
ちょうど村人さんが通りかかったんですから…。」


さっきから、じれったそうにしていたタヌキが、口をはさみました。
「ところで、長老さま、こまったことがあるんです。」
「うむ、どうしたんじゃ。」
「はい。実は、ミラクマくんがさっきから泣いてばかりで、ぼくたち、困っているんです。」
「うむ、うむ」

長老は、しゃがんだままうつむているミラクマをのぞきこみ、しわがれた声で言いました。
「こりゃ、ミラクマよ、顔を上げなさい。
泣いてばかりでは、男らしくない。わけを話してごらん。」


子グマは、ようやく顔を上げると、
涙でいっぱいの目をしばたたかせながら、つぶやきました。
「うん、あのね…、ぼくね……。」
みんなは、けんめいに耳をそばだてています。
「……おっことしちゃったの。」
「おっことしたあ?」
みんなは、いっせいに声を上げ、首をかしげながら顔を見合わせました。
 


そこへ、三びきのサルたちがやってきました。
手には食べかけのバナナをもっています。

サルは、みんなのようすがへんなのに気づいてたずねました。
「あれ?みんな、どうしたの?」
「シー」
みんなは、口に指を当て、いっせいにサルたちをにらみつけました。

しゃがんだまま肩を落としている子グマに、リスがやさしく問いかけました。
「ミラクマくん、何をおっことしたの?」
「バナナ、だよ」
「バーナーナー!」

みんなの視線が、いっせいにサルたちのもっているバナナにそそがれました。
サルたちは、なにごとがおこったのか分からず、キョトンとしてかたまってしまいます。
 
ただ、子グマだけは、サルたちがいることに気づかず、
しゃくりあげそうになるのをこらえながら、言葉をつづけました。
「ぼくのおばあちゃんが、病気でね。
おばあちゃんの大好きなバナナをもって、お見舞いに行くとちゅうに、
ふくろごとおっことしちゃったんだ。」

「だいじょうぶだよ。」
と、ウサギが言いました。
「きっと、どこかにあるよ。」
小鳥がそう言うと、「そうだよ。」「そうだよ。」と、みんながうなずきました。

「だけど、ぼく、ずうっとさがしたんだよ。
今ごろ、だれかが拾って食べているかもしれない。」

そう聞くと、キツネとタヌキは、サルたちの前にあわてて立ちはだかりました。
サルのもっているバナナが子グマの目に入らないようにするためです。
「そんなこと、ないよ。」
「そうだよ。そんなこと絶対にないよ。」

リスの一ぴきが、
「よし、ぼくらも、いっしょにさがしてあげるよ。」
と言うと、もう一ぴきがすかさず、
「よし、じゃあ向こうの方へ行ってみよう。」
と言いました。
 
子グマは気をとりなおして、立ち上がると、
みんなにお礼のことばをのこして、一度来た道をリスたちとさがしに行きました。
小鳥も、ウサギも、ヘビも、タヌキも、キツネも、フクロウも、それをだまって見送るのでした。



ミラクマの姿がすっかり見えなくなると、フクロウがしわがれた声でサルにたずねました。
「おい、そのバナナは、どうしたんじゃ?」

みんなの視線が食べかけのバナナに集まっているのをサルたちは感じました。
「ど、どうしたって?これ、……ひろったんです。」
「えー!」
みんながいっせいに叫んで、サルたちをにらみつけました。

サルたちは、やっとこの場の事情がのみこめたようです。
「これ、ミラクマくんのバナナだって、知らなかったんだよ。」
「病気のおばあちゃんにあげるバナナだって、
ぜんぜん知らなかった。」
「ああ、どうしよう」
サルたちは、困って泣きそうになりました。

みんなも、困って考えこんでしまいました。
「どうしよう。どうしよう。」
 


それから、しばらくして…。


さて、ここは、ミラクマのおばあちゃんの家です。
 
おばあちゃんは、病気のためにベットでねています。とても苦しそうです。
「ああ、頭がいたい。
おお、おなかもいたい。うううん。うううん。」
 
ピンポーン、ピンポーン。
げんかんのチャイムが鳴りました。

「おや、だれだろうね。」
おばあちゃんがげんかんまで行くと、入ってきたのは、子グマでした。
「おばあちゃん、こんにちは。おばあちゃん、病気はどう?」
「おや、まあ、ミラクマちゃんだね。お見舞いに来てくれたのかい。」
おばあちゃんは、にこにこしています。
 
でも、子グマはなんだかかなしそうです。
「うん。でもね。おばあちゃん、ごめんなさい。」
「あれ、まあ、どうしたんだい?」
「ぼくね、おかあさんから、
『もって行きなさい』って言われたおばあちゃんの大好きなバナナを
とちゅうでなくしてしまったんだ。」
「おや、まあ、そうかい。そんなこと気にしなくていいんだよ。
おばあちゃんは、ミラクマちゃんが来てくれるだけでうれしいんだからね。」

 
ピンポーン、ピンポーン。
また、チャイムが鳴りました。
モジモジしながら、入ってきたのは、あの三びきのサルたちでした。

「ご、ごめんくださーい。」
「あのー。じつはぼくたち、ミラクマくんの友だちです。」
「でも、道におちていたバナナをミラクマくんのものだって知らずに、
食べてしまったんです。」
「えっ!」
目を丸くして声を上げたミラクマと、
にこにこ顔のおばあちゃんをかわりばんこに見ながら、
「ごめんなさい。」
と、サルたちは頭を下げてあやまりました。

「これ、おばあちゃんの病気がよくなるようにもって来ました。」
そう言うと、それぞれが後ろ手にもっていた大きなビンをさし出しました。
「これ、ぼくらの森のミツバチくんが作ってくれたおいしいハチミツです。」

ハチミツのいい香りが、ほんわりと家中に広がったようでした。
「おや、まあ、ありがとう。わたしの大好物だよ。本当にありがとう。」
 

ピンポーン。ピンポーン。
また、チャイムが鳴りました。

「こんにちはー。」
入ってきたのは、小鳥、リス、ウサギ、ヘビ、タヌキ、キツネ、そしてフクロウでした。

おばあちゃんは、もうびっくり。
「おやおや、まあ、こんなに大ぜい、どうしたんだい。」
「ぼくたち、みんな、ミラクマくんの友だちです。」
「バナナを買うお金がなかったから、みんなで、かわりのものをもって来ました。」
「これ、森の中のおいしいくだものです。」

かごの中に山とつみ上がったくだものを、おばあちゃんにさし出して、
ウサギが言いました。
「おばあちゃん、早くよくなってね。」

すると、みんな口をそろえて言いました。
「おばあちゃん、早くよくなってね。」
 
おばちゃんのにこにこ顔が、急にクチャクチャになっていました。
「わ、わたしゃ、うれしいよ、みんなが来てくれてうれしいよ。
なんだか、泣けてくるねぇ。」
 
おばあちゃんの体が、小きざみにふるえ出しました。
「わたしゃ、がまんできない。ねえ、泣いてもいいかい。」
 
さっきからそばでじっと見ていた子グマがあわて出しました。
「おばあちゃん、ちょっとまって!
みんな、おばあちゃんが泣くと、
地震が来たみたいになるんだ。気をつけて!」
 
みんなもびっくりして、あわててまわりの何かにしがみついたり、
テーブルやいすの下にもぐったりしました。
 
しばらくして、おばあちゃんの泣き声と
それにつづくみんなの叫び声が聞こえてきました。

「わたしゃ、うれしいよぉー!
 わああああああああああああああん!」

「わあああああああああああああああ!」 

まるで本当に地震がきたように、
家中がゆれうごき、みんなひっくり返ってしまいました。

けれども、静けさがもどった後、
子グマはテーブルの下から顔をのぞかせると、うれしそうに言いました。
「おばあちゃん、何だか、元気になったみたいだね。」
 
そう聞くと、おばあちゃんは、
「ほんとだよ。元気もりもりだよ。」
と言って両手でこぶしをつくり、
とくいそうにそれを頭の上につき出すポーズをとるのでした。
 
メガネをとばされそうになったフクロウが、そのようすを見ながらつぶやきました。
「よかった。よかった。」

すると、みんなも口をそろえて言いました。
「よかった。よかった。」
 
にこにこ顔のおばあちゃんは、みんなに向かって声をはずませて言いました。
「それじゃあ、今から、森のくだものとわたしがやいたパンで、
ハチミツパーティーをしましょう。ミラクマちゃん、みんな、手伝っておくれ。」
「やったあ!」
森の小さな家で、楽しい楽しいパーティーのじゅんびが始まりました。

   

 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


この童話は、数年前に劇の脚本として書いてものを物語化して、
ブログ上で今回初めて一般公開したものです。

もしも、この童話を子ども向けの雑誌などに掲載することを望まれる
編集者さんがいらっしゃいましたら、ご連絡いただければ幸いです。


(ミラクマくんは、下記の本に出てくるメインキャラクターです。)

きっと、だいじょうぶ。きっと、だいじょうぶ。
(2008/07/02)
中井 俊已

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